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明日の世界の海のレビュー・感想・評価

明日の世界(2015年製作の映画)
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止まらない時間の中で泊まっていたくなるときがある。夜に向かう夕暮れの時間、陸橋の上から見下ろす、渋滞した道路の、一台一台の車の中に、どんな人たちがいるのかを想像するときもそうだ。家族とうまく話し合えなくて泣いている人がいたり、仕事が手間取ったせいで次の予定に間に合いそうにない人がいたり、やることに追われて疲れきってただぼんやり前の車のテールランプを眺めている人がいたり、そういう人たちのことを想像する。そのとき、とても親しいひとと一緒に時間を過ごしているような、そんな安心に抱かれる。もしわたしが、227年後のわたしと会うことができたら、わたしはわたしの好きな音楽を教えてもらって、少しだけ歌ってもらう。それから最近一番感動した映画のタイトルを聞いて、簡単なあらすじをおしえてもらう。それから、だれかと暮らしているか聞いて、もしも暮らしてたら、そのひとの最も美しいところを聞いて、そのあと、動物と暮らしているかどうか聞く。暮らしてたら、その子の名前をおしえてもらう。「わたしがわたしに教わったその名前をいつかその子に付けてあげるとき、その名前は、どこからやってきたことになるの」とわたしは聞く。そしたら、わたしは、わたしの知らないような難しい言葉を使って、わたしに説明してくれるんだろうか。とおい未来のわたしと話すとき、わたしはわたしをわたしだと感じられるんだろうか。笑ったり見つめあったりして、わたしの顔だっておもうんだろうか。永遠のいのちを与えられても、今のわたしにはきっとそのいのちを任せ切れる場所がない。永遠のいのちよりもずっと、わたしは、天国があってほしいな。わたしがそこへ行けなくてもいい。天国が必要な子たちのために天国があってほしい。いつか、百年後も夕焼けはあるよと、夢の中で言いにきてくれたひとがいた。いつかまたその問いかけをだれかにする日がくるのなら、わたしはその日までの時間を永遠と呼んで生きるよ
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