晴れない空の降らない雨

明日の世界の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

明日の世界(2015年製作の映画)
4.2
 幼いエミリーのもとに未来から彼女の3代目クローンがやってくる。エミリーの時代から、記憶を自身のクローンに転送することで(お金のある)人は永遠に生きられるようになったのだという。クローンはエミリーを自分の時代に転送し、未来の様子や自分の半生について紹介する。
 どこかで見たようなSF的世界観に少しゲンナリしたものの、棒線画のキャラクター、幾何学的模様、CGのよく分からんオブジェ、さらには加工された実写映像などといった映像とはマッチしている。ペーソスを染みこませたユーモアはなかなかセンスあり、時おり笑いも起こった。
 例によって、こうしたクローンたちは感情を失いかけて索漠と生きている。例によって、ここでは自己の同一性が問題となる。つまり、過去のエミリーたちの記憶を引き継いだクローンには、それ自身の人格があるのか。○の頭部に△の胴体、そこから生えた|の手足によって、無造作に「生命を与えられた」キャラクターの造形が、こうした問いを視覚化している。
 また、同時上映された『イライザから私たちへ』同様に、記憶とナラティブがテーマに置かれているのが興味深い。やはりアニメーションという表現手段の選択と密接に関係があるということだろう。