Ritz

リアル鬼ごっこのRitzのレビュー・感想・評価

リアル鬼ごっこ(2015年製作の映画)
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【シュールに負けるな、運命に抗え】

最大級の惨事と言える。

しかし正面突破が正攻法とは限らない。結果、個人的にはここまで原作を躊躇なく黙殺しきった園子温に最大級の賛辞を贈りたい。

トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜の三重奏でおくるアンサンブル狂想曲。
ある日突然身の回りの人々が死にまくる。原因は不明。ただただ猟奇的な死に方で次々と目の前で殺戮がなされてゆく。逃げ出したのもつかの間、唐突に入れ替わる人格。いったい何が起きているのか、いったい自分は誰なのか。「シュールに負けるな」JKの声がこだまする。息づく暇などはなから皆無。理由はわからない、ただ私たちは何者かに"狩られている"…

潔いほどにすべてがまやかし。まずジャケットがいけない。JKのみが「鬼ごっこ」の対象でない誇大広告はAC公共広告機構にパクられます。次に予告編がいけない。ファンの皆さん、グリムスパンキーの「リアル鬼ごっこ」は本編では一切流れません。そして最後にして最大の虚構。そう、この映画に原作は存在しない。数多の低評価レビューの理由はほぼこれ。エンドクレジットに原作としてクレジットがされているのだから怒り心頭も無理もない。が、しかし。

上記に何かとてつもなく和平的な解決方法が見出されたとして、本作をまったく別の、そうただ一本の映画として鑑賞する機会が得られたと仮定するなら(というか本来はじめからそうであってほしかったのだが)この映画はまったく別の主軸を持ち既存のレビューによる固定概念と切り離され純粋にいち園子温監督の作品として鑑賞しうるだけの奔放さが確実に備わっている。とまあこれだけ言いつつも「やっちまった」事実は変わりないし意外と想定されるその批判をもってしての「シュールに負けるな」ということならまあ見事に遊びきってくれたものだと若干の虫のわるさがあるのは歪めないのだけれども、しかしずばり「おもしろい」と感じてしまった自分の感性にはあながち逆らうものではない気がするので★4を文末に置いておくとする。
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