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追憶の森のHのネタバレレビュー・内容・結末

追憶の森(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

#記録用

キイロ
フユ

私は日本人だから分かったけど、外国人がこの映画を見たら、最後の結末は分かるのだろうか。 渡辺謙がYellow,Winterと言ってる訳でもないだろうし。

最初の自殺を止めることを誘発する看板。
この森に来た時点で、看板はその人にとっては何も響かず、無意味無機質である象徴。

二人の人種や言語、宗教観の違いもこの物語を深くしている。
映画でのタクミは最初から英語が話せているけど、現実では、まず言語の壁がある。
でも、言葉がなくても、ないからこそ通じ合えた時に奇跡を感じる。生きてて良かったと思う。だから最後には、アーサーはタクミを助けに行こうとまで生き返る。
日本人のタクミの思想を聞くことによって、アーサーの世界も広がっている。
世界は思っているよりも広いことを教えてくれる。
人種や文化、言葉、宗教、違う点は探せば探すだけ出てくるけど、ひとりの人間、生物に変わりはないし、生と死はこの世界では普遍であることを、自然の中で描くことで、より一層鮮明になっている。

自分は死にに来たのに、
彷徨って死にかけてたタクミを見かけ、助けたアーサー。
何故自分を殺すことを止めることができないんだろう。他人を救いたいとは思えるのに、同じ状況にある自分を救ってあげようと思うことは難しい。

人の体が物理的に滅んでも、魂は生き続けると信じてる。見えてなくても、温もりや気か何かを感じることができる。
誰かの心の中で生き続けることができる。
最期は花になる、私の理想だな。



「この森は君たちの言う“煉獄”だ」
「君たちとは?」
「because you are American」
「それが?」
「神を信じてる」
「私は科学者だ」
「科学に答えが?」
「すべて解き明かせる」
「神には無理?」
「人間が神を創った」
「それなら なぜ命を絶つ?」
「今 何て?」
「あの世で君を待つのは誰だ? なぜ死にたい?」
(Because you are Americanに、偏見や壁があることを示唆しているように感じた
Because you are Christianならまだしも)


「死にたくない
生きたくないだけ」
「それはどう違う?」


「妻の病気が怒り、偽り、争いを保留にした」

「絶望して来たんじゃない
悲しみでもない 罪の意識で来た」

「遅くない
漆黒の闇に紛れ 愛する人は そばにいる
たとえ死んでいても」

「霊が あの世へ行く時 花が咲くと言われている」

「奥さんを愛していた?」
「世界で一番ね」
「彼女は君といる この森が呼び寄せた
ありがとう 世話になった」


この世界の理、本質を描いていると思う。
穏やかな気持ちになれる映画。
辻村深月さんの「氷のクジラ」を思い出しました。
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