つばさる

エンドレス・ポエトリーのつばさるのレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
4.6
ポスターなどのビジュアルが気になっていたので。
恥ずかしながら巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー監督を知りませんでした。
※後半にネタバレあり


ストーリー ★★★★☆
最初から最後まで笑っちゃうほど謎展開が続く。でも全く理解できないわけではない。
自叙伝なのでリアルなファンタジー?
比喩的表現も多く、全体が詩的でどこまでが事実かわからない。

そしてとにかく脱ぐ。裸、裸、裸。

ラストシーンにはやられた!(良い意味で)

「リアリティのダンス」の続編と知らずに観てしまいましたが、オープニングが恐らく「リアリティのダンス」のエンディングから繋がるんだろうと予想できたし、こちらから観ても問題は無さそうでした。


キャラクター★★★★★
主演アレハンドロの青年期役が監督の末の息子で、音楽も担当
アレハンドロの父親役は監督の長男
あんな過激な内容を実の息子たちに演じさせる精神がすごい(笑)

真っ赤な髪の毛に厚化粧、カラフルにペイントされた脚。暴力的で豪快なステラのインパクトは脳裏から離れません。こんな女性見たことない。途中魔力?使ってアレハンドロを眠らせてたし、本物の魔女かもしれない(笑)

その他 登場人物たちの魅力が半端ない。一人一人主役で映画作れそう。

小さい人が何人も出てきたし、同性愛に苦悩するいとこやバーで給仕する老人達などのマイノリティーや弱者に対して、同性愛者を激しい口調で蔑む父と、存在感がありすぎる黒子、大勢の仮面を付けたエキストラ。(仮面は無関心の象徴?)

タロット占い師とあの少年?青年?の関係も知りたい(笑)


オシャレ度 ★★★★★
これは★5つじゃ足りない!
町の建物にタペストリーを掛けて景色を塗り替えたり、そこに登場するのがハリボテの汽車。
焼きつく極彩色と白黒の骸骨。とにかく高いコントラスト!


鏡と影を使って作られた印象的な構図。(鏡は全体によく使われるので他の意味もありそう。自叙伝だけに自分を写すことを表しているのかな)

弾けるパーティーのシーンはみんなハロウィンの仮装みたい。
それが色鮮やかで「動」を表しているのに対して、エンリケの両親の粉まみれの白さと「静」。背景に戦車の絵画。

衣装デザインが監督の奥さん。
まさに家族で作り上げた自叙伝。


エンタメ度 ★★★★☆
詩的表現が多いので好き嫌いが分かれそうですが、後からジワジワ来ました。(ポエトリーって詩の意味なんですね)
全く予想のつかない展開と作り込まれた画は楽しいです。


メッセージ性★★★★★
全ての詩の意味を理解し全てを受け止められた訳ではないですが、詩に生きると決めた人生に、父親に対する思い、性や戦争といったテーマも。





以下ネタバレ





アレハンドロの親友エンリケ役の俳優さんが、実生活でも主演アレハンドロ役アダン・ホドロフスキーの奥さんの元恋人だとか。それもこの映画のキャスティングが決まってから撮影までの間に交際して、別れて、アダンと結婚していたので、アレハンドロがエンリケの彼女を寝取るシーンのエンリケの怒りはリアルなものだとアダンが語っています。
撮影の裏側までぶっ飛んでますね(笑)

アレハンドロとステラの初めての性行シーンの直後に両親の営み。
しかも最中の母の歌に「三位一体」というフレーズが…
これはステラと母が一人二役という事も関係あるのかな?

年の差カップルが口を開かず腹話術で会話するシーンは、心で繋がっている純愛を描いていて好きです。人形でキスするのも印象的。

序盤で燃やす「棺桶みたい」なバイオリンケースと、中盤で肉と生卵を詰めていた楽器のケースがリンクしてるんだと思うけど、それが意味するものはよくわからなかった。何故投げつけていたのか?

その直後のエンリケがしていたキリストのような格好も意味深。

最初と最後の場面を繋ぐ紫の小船には骸骨。(最初の骸骨には無い羽が最後の骸骨には生えてる)
最後に父を蹴りつける当時のアレハンドロ。
序盤で万引き男を執拗に蹴るよう指示した父を思い出させるシーン。

赤と白黒のカーニバルのシーンは頭の中?

諭す現在のアレハンドロのセリフ「老いは屈辱ではない」が好きです。

他にも印象的な詩が多く、1つ1つを一度では理解出来なかったので、また観たいと思わせる映画でした。
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