プペ

アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たちのプペのレビュー・感想・評価

4.8
聞いたことは何も信じるな、見たことの半分は疑え――。

1899年、深い霧が立ち込めるイギリス郊外の小さな田舎町。この地の片隅に、滅多に人が訪れることのない古い建物がひっそりと建っていた。
そこは、ストーンハート精神科病棟。
高い塀に囲まれ世間から隔離されたこの施設には、回復の見込みが薄い精神病患者が200人近く入院している。
物語は、この怪しげな建物にエドワードと名乗る若い精神科医が訪ねてくるところから始まる。

なるべく医師と患者との距離を取り払った治療方針を心掛けるサイラス館長の下で、新たな生活を始めたエドワード。
彼は、そこで謎めいた雰囲気を身に纏う、グレイブ夫人という美しい女性と知り合うのだった。
かつて精神錯乱に陥り、夫の耳を噛み切ったうえ片目を抉り出したという夫人に、何故かエドワードは強く惹かれてゆく。
何とかして彼女を自由の身にさせてやりたいと誓うエドワードだったが、ある日、彼はこの施設に隠された恐るべき真実を知るのだった…。


豪華俳優陣を使い、エドガー・アラン・ポーの短編小説を映画化したという本作は、そんなおどろおどろしい雰囲気が漂うゴシック・ミステリーだ。
確かに濃厚な空気に支配されたこの雰囲気はなかなかのものだった。

非人道的な処置を施してきた精神科医療の歴史が背景にあり、患者と健常者との境界線の曖昧さや対照的な治療法の狭間で見事に揺さぶられた。
それぞれや、病院の「正体」は比較的すぐに明かされるが、そこから単に観客を"騙す"のではなく、その先に踏み込んでいく様に惹き付けられる。
二転三転する脚本も破綻なく纏められていたし、誰もが秘密を抱えていそうな怪しげなキャラクターたちを個性豊かに演じた役者陣も、皆、いい仕事をしたと言っていいだろう。


鑑賞後、「なんて映画だ!」と、感嘆を込めて叫びたくなる。
その感嘆は、このいわゆる「どんでん返し」作品を幾度となく観て、幾度となく感じてきたことだけれど、やはり、自分の想像を超えたストーリー運びを魅せ付けられる度に、映画ファンであることに、幸福感を覚えずにはいられない。

ただ、観終わった瞬間にまた次に再鑑賞したくなるものではないことは確かだ。
ただし、それは決してこの映画が楽しくなかったわけではない。
むしろ、しっかりと楽しく、痛快だ。
プペ

プペ