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テラフォーマーズのymdのレビュー・感想・評価

テラフォーマーズ(2016年製作の映画)
1.0
原作は一応既読でそれなりに好きなマンガなんだけど、あまりの低評価&酷評っぷりに怯んで未鑑賞だった本作。でも観てないのに貶すわけにもいかないよなってことで意を決して鑑賞。噂通りの駄作でむしろ安心した次第です。

本来は国際政治の絡む壮大なストーリーを持ち味とした原作を邦画で成立させることは(予算的にも技術的にも)不可能だと早々に踏んだことが想像がつく舞台設計はまあ良いとして、ビッグバジェットの邦画ならではとも言える悪手に塗れたキャスティングに大萎え。

芸能事務所やらスポンサーやら知らないけどそういう利権に足下を取られていて、どう考えてもミスキャスティングであり、ねじ込んだスター達に中途半端な見せ場を設けようとした結果、原作にあったヒリヒリするような緊張感が霧消し終始弛緩した居心地の悪い空気が充満している。

どう考えても不要な気持ちの悪い”コミカル“な演技や、時代遅れも甚だしいロマンポルノ風情の湿ったシークエンスなんかは呆れを通り越して怒りすら湧き上がる。

肝心のアクションも何番煎じか分からないようなスローモーションの乱発がテンポ感を悪くしているし、大人の事情でレーティングをGにする必要があったために非常に生ぬるい。首をスポッと飛ばせば良いもんじゃないよ。

人気コミックとはいえゴア描写に拘りのある原作なのだから、最低限そこは担保してもらわないとそもそも実写化としての意義をまるで果たせていない。

三池崇史はやりたい放題した時に真価を発揮する監督であり、こういう製作委員会ガチガチの制作体制に置かれた時のヤル気の無さは露骨である。ぼくは改変することに対しては否定派じゃないけど、それはあくまでも「これはこれで面白いな」と思えてのことであり、このような愛のカケラも感じさせずに金の香りしかしないような改悪は到底許せるものじゃない。

せめて超B級のカルト映画みたいな作りで拙くも自由にやってくれたほうがよっぽど可愛げがあって楽しめたかもしれないのに。

好きになれる部分がないか一生懸命探したんだけど、残念ながら何一つなかった。近年稀に見る駄作。珍作にもなりきれないのがなんともやるせない。
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