菩薩

ボクシング・ジムの菩薩のレビュー・感想・評価

ボクシング・ジム(2010年製作の映画)
3.8
老若男女問わず人種も飛び越え語らいの場として繁栄する場末のボクシング・ジム。既に「拳で語る」が男性だけの専売特許でない事は明らかな事実であり、様々な目的・目標に向かい自己鍛錬を重ねる者同士の緩やかな連帯とリスペクトが軽妙なリズム感の中で映しとられていく。何を隠そうガチンコ・ファイトクラブネイティブ世代の自分にとっては、ボクシングが持つある種の犯罪抑止効果や身体のみならず精神的成熟度をグイッと上げる効果についてはなんら疑問を持ち得ない、本当に強い人間と言うのは無闇矢鱈に人を傷付ける事はしないだろう。プロ・アマ入り乱れひたむきに鏡の中の己と向き合いミットに思いの丈を打ち込んでいく、鳴り響き続ける乾いた音と甲高いブザー音が醸し出す独特のグルーヴ。オーナーが辰吉と同じ髪型をしていると言うのも大変それっぽくて嬉しくなる。鍛練、発散、小さなコミュニティとしてのボクシング・ジム、ここには上も下も右も左も無く、ただただ汗を流す者達の四角いリングだけが存在している。
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