和桜

黄金のアデーレ 名画の帰還の和桜のレビュー・感想・評価

3.7
ナチスに奪われたクリムトの「黄金のアデーレ」を巡る実話。アメリカ在住の女性が、オーストリア政府に対して絵画の返還を求めて裁判を起こす。
頑なにオーストリアの地を踏みたくないと訴え続ける謎。その理由が、第二次世界大戦下で彼女が過ごしたオーストリアの様子や名画の背景と共に映し出される。段々とトラウマとも思えるほどの拒絶感や嫌悪感が伝わってきて辛い。
これは絵画の返還を求める裁判の話なんだけど、彼女が奪われたものはそれだけではなく、それを取り戻すための物語でもある。

ただ今作はあくまでアメリカの視点から描かれてて、オーストリアが製作に入ってないことが悲しい。
オーストリアは戦後の裁判でナチスに占領されていたのか、併合されていたのかと議論になるくらい難しい立場なんですよね。戦後の戦争責任に関してはかなり曖昧で避けてきた節もある。この映画に出てくる市井の人々は誰一人見方として映らなくて、そういう描写を気にしてしてしまうのかなと疑問を抱いてしまった。
絵の返還に反対する人と、ユダヤ人への迫害を認め償おうとする人々。この分け方が法廷らしくて法廷物としてもなかなかに巧い。
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