グラッデン

完全なるチェックメイトのグラッデンのレビュー・感想・評価

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
4.0
東西冷戦下の1970年代を舞台に、アメリカの若き天才チェスプレイヤーのボビー・フィッシャーが、当時のチェス界では最強を誇るソ連の世界チャンピオンに挑んだ実話に基づく物語。

作中で述べられる「これは戦争だ―イメージの戦争だ」という表現が印象的であるが、チェスの世界王者をかけた戦いが、盤上における第三次世界大戦のような様相を呈するという展開が、にわかには信じがたい話なのではあるが、実話がベースなのだから驚かされる。これもまた時代なのだろうか。

また、本作はチェスにおける「神の一手」をめぐる物語とも言えるだろう。とはいえ、チェスのルール自体はさほど深い理解が必要がないように作られているのは良かった。テーマ性や作品の構造上は何となく『ヒカルの碁』を彷彿させる。

本作の主人公・フィッシャーについて、突出した才能のある人物=天才として描くと同時に、彼が持つ感性の繊細さがもたらすと情緒の不安定さ、それが次第に狂気に変貌する様を丁寧に表現していたと思う。

そんなフィッシャーを演じるのは、トビー・マグワイア(主演だけでなく製作でもある)。『スパイダーマン』の印象が強い彼であるが、同作に続いて、自分が持ちうる能力の副作用に悩む姿を好演している(贅沢を言えば狂気に陥った側面はもっと極端でよかったかもしれない)。