FRANCIS

完全なるチェックメイトのFRANCISのレビュー・感想・評価

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
3.8
米ソ対立の駒として、東西陣営の威信を賭けた国際試合という名の代理戦争。敗戦の機運漂うベトナム戦争期、崖っぷちに立つ資本主義イデオロギー。

世界最強のチェスプレイヤーが苦しむ重圧、心と体を蝕む狂気。エスカレートする奇行と妄想、反共と反ユダヤ主義の陰謀論。自らユダヤ系のルーツを否定し、母親が熱狂的にのめり込んだ社会主義運動にも牙を剥く。高過ぎる知能指数の犠牲になった、若き英雄の悲劇的半生。

『スパイダーマン3』の闇堕ちを想起させる、トビー・マグワイアのエキセントリックな演技が否が応でも目を引き離さない。この後俳優業から長い休業に入る彼の最後のベストアクトと言える。

盤上での緊迫感は中盤まで持続するものの、世紀のスパスキー戦に焦点を絞った後半の演出はやや急ぎ足で散漫な印象的を残す。
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