ケンジモンデン

完全なるチェックメイトのケンジモンデンのレビュー・感想・評価

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
4.4
トビー・マグワイアといえば、初期スパイダーマンのイメージがついて回る。世界を虜にしたシリーズから10年以上経ち、40歳を迎えた彼の主演作となった本作。
ハマリ役だったと思います。

天才ボビー・フィッシャーの実際の奇人・変人ぶりをどうこう言うつもりはないけれど、その狂気に満ちた行動にはチェスの世界にしか、天才にしか分からない世界があったのだろう。最初は冷静に見えたソ連の対戦相手さえ、精神に異常をきたし始める。ルールは分からなくても、チェスという世界の執着性や奥深さ、恐ろしさすら感じさせる演出に引きずり込まれていきます。
しかし、ボビーに関しては他に「母親」というキーワードが垣間見え、天才凡才関係なく誰にでも存在する「孤独感」も彼を狂わせる一因だったのかもしれません。あくまで推測ですが。
ポーン(歩兵)のように犠牲となっていた(と、彼自身がそう思っていた)のかは分からないけど、国に振り回される中でもチェスに人生を捧げ自分を貫き通していた人間だったのだと思います。

トビーのあの目が狂気と思え始めたのは「マイ・ブラザー」からだけど、「スパイダーマン3」でもその片鱗は見えていた気がします。怯え怒り悲しみ、そんな感情を全て帯びてしまったようなあの目を作った、という意味ではあの「3」は成功だったのかもしれない。本作でも十分に発揮されてました。良かったです。