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ラスト・フェイスのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

ラスト・フェイス(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

説明的なセリフやテロップが少なくて、分かりにくい感じもするけれど、表情や仕草で物語を表現しようとしたのかな、と思います。ショーン・ペンが監督とは驚きで、彼の人柄を見直しました。戦いを娯楽にしてしまう映画が多い中、問題提起する形は好きです。ただ、テンポがとてもゆっくりで、退屈のあまり、うたた寝2回。3日かけて見ました。だんだんと、映像から感情の流れを読み取る作業に慣れました。

シャーリーズ・セロンがほぼノーメイクで、別の一面を見せてくれた感じがします。父親の残したMDMという会社を引き継ぎ、紛争地域へ駆けつける医師レンの役。野鳥好きなので、WREN(ミソサザイ)という名前の存在に驚きました。『ノーカントリー』のハビエル・ヴァルデムも国境なき医師団の医師で恋人のミゲル役。ジャン・レノや、ジャレッド・ハリスも医師役で登場です。豪華キャストだけど、どうも歯切れの悪いテンポで、退屈感は否めません。2人の叶わぬ愛の部分が弱いのかなあ。私は時間軸が2つに分かれて進行していく点が分かりにくかった。何でレンは怒ってんの?という疑問ばかり湧いてきて、もう少しアフリカの現状に集中したかったです。

評価はあまりよくないようですが、私は勉強になりました。リベリア内戦や南スーダンの紛争の現実を突きつけられた感じです。積み上げられた少年の死体にハエがたかる様子や、洗脳された少年少女の戦士の様子は、鮮烈な印象となって脳裏に焼き付いてます。『ブラッド・ダイアモンド』の洗脳された少年を思い出しました。そして、救いたい命があっても血液・医薬品が不足していたり、手術中に爆撃を受けてしまったり、大変な様子が伝わってきます。支援団体の経済的状況も厳しいですね。何よりも、レンが陥ったように、精神的にやられてしまう点は見過ごせない現実だと感じました。所詮、人間だから、ロボットじゃないし、限界があっても仕方がないと思います。ミゲルみたいに、揺るぎない信念を持ってできることは、素晴らしいけれど。

コンサート会場でのレンのスピーチは良かった。頭で追うだけの理想と現実は違うということ、体験しないと分からないということ、ありますよね。考えが甘かったとも言えるけれど。監督のメッセージは伝わってきました。難民が要求するものは、お金や食べ物だけじゃなく、書物ってこともあるなんて、想像してもいなかった。つい昨日までは、研究者だったなんて、誰のせいで貶められてしまうのか。世界情勢、各国の力関係、気になります。いつ自分の身に降りかかるかも分からない。コンサートの後、ミゲルの手紙を読む時の青い光や、エンドクレジット辺りで風に舞う青い紙が印象的です。何を象徴するか、分かりませんが。映像は全体的にキレイで、アフリカの景色も新鮮でした。
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