なっこ

64 ロクヨン 前編のなっこのネタバレレビュー・内容・結末

64 ロクヨン 前編(2016年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

事件の真相を明らかにしていく本ストーリーと同時に

前編・後編を通して描かれるのは、組織の中でいかに生きるか、ということだと感じた。

仕事をする上で大事なことは、「対立構造を作らないこと」という言葉を思い出した。
対立しているうちに、時は過ぎ、判断は遅れ、問題はより複雑さと深刻さを増していく。不毛な小競り合いによって一体何を守るべきなのか分からなくなっていく、多くの組織がきっと同じ悩みを抱えているのではないだろうか。

ときおり出てくる、
「魂まで売った覚えはない」という主人公のセリフ。
ひとつひとつの仕事をやり通す上で、けして譲ってはいけないラインが組織のどの立場にいてもきっとあるのだと思う。それは職業倫理のような、自らの果たすべき使命。それは組織の独りよがりなものではなく社会的にもまっとうなものでなければならない。
人は、その摩擦に苦しむ。個人として貫きたいことと、組織としてあるべき正解の道が必ずしも一致していかないから。

ひとりの人間の中に潜む魔物の存在。
善人か悪人なんて、簡単に割り切れるものではない。
上に立つ者の心ないたった一言で、下の者は簡単に暗い谷の底に突き落とされる。けれど、その暗闇に一筋の光を差し入れるのもまた他人のたった一言。

私は、事件後引きこもってしまった青年に主人公が差し入れた手紙の一文に涙が止まらなかった。

凶悪犯罪はけして許されるものじゃない、
だけど、誰かのための正義の鉄槌が、次の誰かの悪夢の始まりになるのかもしれない。
そのくらい、“正しい”道を辿るのは難しい。間違うこともあるのかもしれない、それでも、一歩ずつ愚直に進んでいくしかない。

長い暗闇のような
泥の中を歩くような
そんな日々を抜けた先に、新しい世界があると信じて。
なっこ

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