らんら

インフェルノのらんらのレビュー・感想・評価

インフェルノ(2016年製作の映画)
3.5
安定して面白い。
説明不足なところが結構あるので、ただでさえややこしい話が余計難解になっていますが。

「天使と悪魔」に比べると序盤は作風が結構違っていたのでびっくりしました。
「天使と悪魔」は正統派ミステリという感じでしたが、本作は主人公が「記憶喪失」という点でサスペンス要素が強め。
演出も含めてノーラン監督味を感じました。

序盤はほんとに何が起きてるのか全然理解できないのでストレスですが、主人公の記憶が戻っていく内に観ているこちら側の謎も解けていくので気持ち良い。良いストレスでした。終盤の回収はとても楽しかった。


ただ、ゾブリストがカリスマ扱いされる割には彼の唱える「人口半減計画」が魅力的に見えない。
この映画ではゾブリストがはっきり悪役として設定されているのもあって、彼の考えに共感しにくいように描かれています。
やや極端に描きすぎな気がする。

ゾブリストの考えと、主人公を始めとした大多数の考え、両方同じくらいのベクトルで描いて欲しかった。

そして最後まで、どちらの考えが正しいのか鑑賞者に考えさせるようなモヤモヤしたラストだったら私の好みでした。

本来ゾブリストの考えはあながち全否定できるものじゃないはず。『スイッチを入れると地球上の半分の人間が死ぬ。だが入れなければ100年のうちに人類は絶滅する。』
人類の存続を願うなら合理的な考え。
でもそんなことは倫理が許さない。

そういう思考実験のような、正論と倫理の間の揺れが見たかったので、本作ではゾブリストの描き方が極端なのが少し残念だなと思いました。

原作ではウイルスの性質が全然違うみたいなのですが、原作の設定の方が私好みです。
そちらの方がゾブリストの考えに説得力があるので…
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