湯呑

インフェルノの湯呑のレビュー・感想・評価

インフェルノ(2016年製作の映画)
4.0
基本的にこのシリーズは「謎解き」がメインに据えられてはいない。なぜなら、観客にあらかじめ謎が提示されている訳ではないからだ。主人公ラングドン教授が様々な美術品や建築に隠された秘密を解き明かした時に初めて、私達はそこに謎があった事に気づかされる。「謎」と「謎解き」が同時進行する形で、サスペンスが展開するのだから通常のミステリーにある様な、「謎」によって観客を引っ張る様な構造になっていない。それでも第1作『ダ・ヴィンチ・コード』では最後に大ネタが用意され歴史ミステリーとしての構成を保っていたが、第2作『天使と悪魔』と本作にはそうした大ネタは無く、よりヒッチコック的なサスペンス色が強まっている。特に本作は、『めまい』や『白い恐怖』を思わせるシーンが登場し、ヒッチコックへのオマージュがうかがえる。今どき、ヒッチコック流のクラシックなサスペンスを目論んで成功させてしまうのは、ロン・ハワードの堂にいった演出力の賜物だろう。
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