ダイナ

怪物はささやくのダイナのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.1
スクールライフでのいじめに怪奇、静謐な日常描写、葛藤…雰囲気はぼくのエリからグロさを差し引いたような感じ。本作の大きい特徴としては迫力ある映像で表現される語り手の「怪物」の存在です。

孤独な少年の元にこれもう心臓捧げて駆逐対象だろレベルの樹木100%な巨人が現れて「お前に3エピソード話してやる。その後お前が1エピソード話せ」とか言うわけですよ。???????ちょっと何言ってるの分からねえ。おそらく後半で分かるであろうけども唐突な謎進行宣言に笑いが止まらない。少年も意味不明ながらも何かは知ってる風な話ぶりで、夢の中で自分自身訳がわかってないのに謎の行動とっちゃうみたいな雰囲気がありつつ、反抗しながらも怪物の進行に則る少年。毎夜怪物から寓話を聞かされる少年。もはや寓話教訓深夜ラジオの連夜放送で最終日にお便り出すようなもの。途中まで意味がわからなすぎて決着が予想つかない所が個人的に嬉しかったポイント。

日常描写が結構重いのも印象的。本作の核心はつかずに、日常風景で少年の背景と心情を察せられる映し方が丁寧で、情報の小出し具合と怪物のエピソード語りが良い塩梅でターン巡りしてくれるため飽きさせません。「いたたまれねェわこの空気」「あぁヤベこれ涙腺くるわ」序盤の怪物のダイナミックかつシュールな存在ぶりにニヤニヤしていたものの、ドラマのテンション低空飛行な感じが鬱屈さをありありと感じさせてくれて良かったです。

ダークファンタジーながらダイナミックなシュールさは映像の迫力と相まって笑いを誘われるものの、喜哀楽の感情を刺激し、子供時代に訪れる可能性ありな普遍的な悲劇に寄り添ってくれる良作です。
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