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怪物はささやくのGakuのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.0
病気の母親を持つ13歳の少年の内なる葛藤を、現代の神話として描いた物語。
イギリス北部の小さな町に住む中学生のコナーは、母リジーと二人で暮らしている。趣味は水彩画。彼の窓からは教会の丘とその丘を守るようにイチイの木が聳え立っているのが見える。病の母親が寝静まった夜(深夜零時7分)に突然、教会のイチイの木がモンスター(怪物)に化け、コナーを訪れ、三つの物語を彼に話すことを伝え、そしてその三つの物語が語られた後、代わりにコナーに彼の「真実」の物語を語ることを求める。
少年コナーはしらばっくれる。「話すことなど何もない。真実などない」と。だが、母親の病状が進むにつれ、彼は毎夜悪夢に苦しめられていることを、誰にも伝えられずにいる。学校でも級友に深刻なイジメを受けていることも。
生真面目な祖母や、離婚してアメリカに住む父親が、彼に語りかけるも、彼は決してその悪夢については語らない。
怪物は、それから毎夜零時7分に彼の元に現れ、ある王国の物語、薬草医と牧師の物語、そして見えない男の物語を語る。さて、少年の真実とは?。そして母親や祖母たちとコナーは、現実に起きていることにどう向きあっていくのか。
ところどころ、コナー役のルイス・マクドゥーガルの繊細な表情、母親リジー役のフェリシティ・ジョーンズの可憐さと、それらを巧みに用いた話回しで、心を動かされた。もちろん、三つの物語の比喩が分かりにくいなどの欠点はあるが、イチイの木のモンスターの造形、アニメーション、そして水彩画の効果など、素晴らしい作品に出来上がっている。私としては佳作の少し上の良作。オススメです!
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