桃子

怪物はささやくの桃子のレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.0
「真実を話せ!」

現実と夢の境界線が曖昧な映画は、非常に私好みである。たとえば、学校の食堂に突然現れる巨大なモンスター。学校というリアルな場所に出現するダークファンタジーのキャラクターは、白日夢であることに違いないのだが、主人公のコナー少年は覚醒したまま夢を見ているのか、それとも食堂で午睡の最中なのか、判断はつかない。こういう映像を見ると、映画というエンターテイメントの醍醐味を味わうことができて、ありがたいことだなあと思う。
モンスターはまるでLOTRに登場する木の精霊「エント」のようなビジュアルである。動物ではなく植物というところがいい。以前、よく一眼レフカメラを担いで撮影に出かけていた。森林の撮影に行って、大木の下で動けなくなったこともあった。何百年もここにいるのかと思うと、神秘を感じざるを得なかった。思わずそっと幹に触れて、パワーを貰おうとしたこともある。
原作は夭逝してしまった人が残したメモで、それに基づいて別の人小説を書いたという。話を思いついた本人が病気で若くして亡くなっていたなんて… だから物語に説得力があるのかもしれない。
人の心は単純ではない。いつも矛盾をかかえているし、きれいごとだけで生きていくこともできない。その複雑な人の心を、こういうファンタジーで表現しているのが素晴らしい。映画はほぼ原作通りなのかと思ったのだが、カットしたり付け足したりしているようである。原作にはコナーを助ける役どころのリリーという女の子が出てくるそうだ。映画ではそっくりカットされている。これはちょっと残念だなあ。
リーアム・ニーソン演じる木のモンスターが「真実を話せ!」とコナーに迫り、コナーがついに自分の本音を吐露するシーンが圧巻である。彼は何から逃げていたのか。何を恐れていたのか。本当はどうしたかったのか。その真実を話すと、ようやく彼は悪夢から解放されるのである。
コナー少年を演じているのはオーディションで選ばれたルイス・マクドゥーガル。つぶらな瞳と長い睫毛がとっても可愛い!演技もどひゃ~~~と思うくらいしっかりしていて脱帽ものだった。
癌を患っている母親リジーを演じているのはフェリシティ・ジョーンズだが、私はてっきり初見かと思った。「インフェルノ」でシエナを演じていた女優さんだったか~ 毎度、記憶力の悪さには参ってしまう。
コナーの祖母役はシガニー・ウィーバーで、祖母役は初めてだとか。お婆ちゃん、と呼ばれても全く違和感のない容貌になっていたけれど、それは年輪というものだろう。貫禄があってよきよき。踏切のシーンにじ~~んと来てしまった。彼女の次回作は「ゴーストバスターズ/アフターライフ」のようだ。コミカルな演技をしてくれるのかなと期待している。そうそう「エイリアン」もしっかり再見してレビューを書きたい。
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