Donatello

シグナルのDonatelloのレビュー・感想・評価

シグナル(2014年製作の映画)
3.4
前監督作『地球、最後の男』で、僕のような芸術理解度の低い人間には「かの『2001年宇宙の旅』への憧れを拗らせちゃったようにしか思えない」レベルの前衛的な感覚を教えて頂いたウィリアム・ユーバンク監督ですが、今作は若干のこちら側に歩み寄って頂き、「気がついたら寝てた。何処から寝たのか覚えてない」と言うことはないです。…の筈です。

主人公のハッカーとその恋人、そして友人でこれまたハッカーの3人が、正体不明だが有能なライバルハッカーの居場所を突き止めてカリフォルニアまで行くわけです。顔を拝みに。彼女を送るついでだったんですけども。
この時点でツッコミたくなります。
「君らどうしてオンライン上で戦わない」
でもやめておきましょう。

序盤のここらあたりまで割と普通です。ユーバンクさがあまり感じられません。

と思っていると、いきなりやってきます。ユーバンク節が。
中盤でも進みは緩いのですが釘付け。
寝る気満々でも眠れない。

そして終盤。凄いです。
なんだかわからないまま凄いです。
ここだけでも結構観る価値あるのではないか。
例えば「高速で動く人物」というのを表現する際、ハイスピードカメラ風のスーパースロー映像はイマドキ珍しくもなく、また逆に『マン・オブ・スティール』の戦闘シーンのように早回し風のものもありますが、それらをここまでコマ単位で無駄に凝ってるのもなかなか珍しいんじゃないかと。
BDでスロー再生しても、一コマ一コマが凄く丁寧で、ちょっと一場面プリントアウトして壁に飾ってもいいなぐらいアートです。
著作権というものを無視して映画を垂れ流してるカフェバーなんかでこのシーン映したら、合コンの話題についていけなくて手持ち無沙汰な青年のハートをグッと掴める映像美。

とは言え、やっぱりユーバンクさんですからして、特に説明される事もなく放り出されるのはある意味凄いです。

好きか嫌いかと言われればそこそこ好きな映画になるとは思いますけど。
もう少しレベル下げて頂けると有難いですね凡人ですから。
Donatello

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