「彼は真のミュージシャンだった 自分ひとりで独自のスタイルを築き上げた ロックでは本当に難しいことだ」
劇中の言葉が示すように、ジョニー•サンダースは存在そのものがオリジナルで、たった一言、カッコいいに尽きる。
〝ロック〟であること以外の人生のあらゆる大切な瞬間をドラッグの混濁に溶かしていったような。それは光と闇の渾然一体で、彼を見ていると悲喜交々の不思議な感情に飲み込まれる。
ジョニー•サンダースの生と死の狭間には常にドラッグがあった。ロック•スターでジャンキー。もはや失われた時代の産物のような響きだが、そこで彼が体現しながら表出した作品は、世代を越えたいまも多くの人々の心の中で響いている。そうやってずっと受け継がれていく、永遠に色褪せない宝物だと思う。
38年の生涯。謎めいた彼の死の間際を想像してしまった。あまりに哀れで切ない幕切れ。激しくのたうち回ったのだろうか、それとも朦朧と静かに、溶けて、消えていったのだろうか…。彼のアコースティック•ソングは果てしなく優しい。痛みがあって、痛みを知る者の温かさにも溢れている。アコギのライブシーン、少し泣いちゃったな。
大昔に買ったライブDVDのカバー写真がヤバすぎる表情で、これは完全にアウトだろと思った。中毒者の生気の抜けた表情と目。このドキュメンタリーがアンチドラッグの趣きで締め括る流れも必然と言えるだろう。
ジョニーにヘロインを仕込みジャンキー地獄へ誘ったとされるイギー•ポップが、この破茶滅茶で壮絶なシーンやら時代を生き伸びて、今もなお現役で活躍していることの驚異を改めて。彼の盟友たちも次々と逝ってしまったが、イギーにはいつまでも元気でやって欲しい。
「統率されたカオス」←劇中の印象的なワード
「他人には助けられないんだ。 自分で問題に気づかないとね。 そうでなければ解決の道はないんだ。」byジョニー•サンダース