うみぼうず

美しい都市のうみぼうずのレビュー・感想・評価

美しい都市(2004年製作の映画)
4.0
非常に見応えあり面白い作品だった…途中までは。
イランの死刑制度で、死刑を早めるのも止めるのも賠償金が必要で、更に男性の賠償金は女性の2倍であるという。裁判はしているんだろうけど、死刑を撤回するか否かは被害者側がある程度決めることができる、と なかなか日本の制度とは異なる部分が多く興味深い。

更に被害者には報復する権利があり、とはいえ宗教的には報復よりも赦しの方が望ましいとされていそうであって、被害者の父の苦悩ぶりが痛々しい。神経質そうな表情、陰のある動作など、娘を殺され報復のみを願う気持ちが現れている。
だがモスク師からも赦しを説教され、「なぜ私が(被害者が)悪者のようになるんだ」というセリフには葛藤とやるせなさが詰まっているなと。

主軸がそうした報復と赦しの話だった中盤頃までは良かったのだが、後半の展開は個人的には冗長だったかなぁと感じる。それだけイランの社会では生きていくことが大変なのかもしれないが、取引が先行して被害者父の感情が置いてけぼり。前半あれだけ丁寧に進めていたのに少しもったいないなと感じた。

少年院を舞台として、先生がとても良心的で有能であり、この先生の下だか更生できるのも頷ける。そうした事も含めて単なる地名のみならず『美しい都市』なのかなぁ。

とても色彩豊かで、中東は映画映えするなと思う。基本、家などは白を基調としながら青い窓枠や赤ちゃんの玩具、タバコの箱などが映える。
いい作品でした!
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