ぶみ

人生は二度とないのぶみのレビュー・感想・評価

人生は二度とない(2011年製作の映画)
4.0
だから、ぼくらは旅に出る。

ゾーヤー・アクタル監督、リティク・ローシャン、ファルハーン・アクタル、アバイ・デーオール、カトリーナ・カイフ等の共演によるインド製作のドラマ。
大富豪の娘との結婚を控えた主人公カビールが、独身最後の旅行として学生時代の友人である金融ブローカーのアルジュン、コピーライターのイムラーンとともに三週間のスペイン縦断の旅をする姿を描く。
冒頭、カビールのプロポーズのシーンでスタート、以降、物語は三人組がかねてから約束していたスペイン旅行をする姿を中心に展開するが、婚約はしたものの内心結婚に疑問を抱くカビール、お金が全てと言い切るアルジュン、お調子者ながら親子関係に問題を抱えるイムラーンと、三者三様個性溢れる三人の物語がそれぞれ丁寧に描かれることとなる。
道中、地元のダイビングインストラクターであるレイラとの出会いを筆頭に、美しいスペインを舞台として様々な体験や文化に触れつつ、徐々に人生を見つめ直していく姿が、時にコミカルに、時にシリアスに描かれる様は、ベタながらロードムービーの醍醐味に溢れているもの。
とりわけ、スキューバダイビングに、トマト祭、スカイダイビング、そして牛追い祭りと、スペインの魅力が詰まった映像は、他では中々観ることができないもので、思わず旅に出たくなってしまう仕上がりとなっている。
実は本作品、本国インドでは2011年公開と、11年前の作品であることに、観終わった後に気づいたのだが、全く古さを感じさせないのも特筆すべきところ。
個人的には、スカイダイビングのシーンで、トニー・スコット監督『トップガン』がオマージュされていたのがツボ。
また、インド映画のお約束とも言える、突如始まる長いダンスや、カロリー高めのエピソードが本作品では全体的に薄めとなっており、比較的万人向けとであるのも特徴的。
独身最後の馬鹿騒ぎという、多かれ少なかれ男性なら、やったことがある、あるいはやってみたいという設定からして、そこはかとないノスタルジーを感じさせてくれるものであり、それは国境を越えて万国共通。
奇しくも現在公開中のS・S・ラージャマウリ監督『RRR』とは、尺の長さは共通ではあるものの、ジャンルも濃さも、ましてや年代も違う作品であり、公開劇場も少なめだが、インド映画のクオリティの高さをあらためて見せつけられるとともに、負けず劣らずの面白さを誇る良作。

腕を広げ、時代を手に入れろ。
ぶみ

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