爆裂BOX

F-16の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

F-16(1991年製作の映画)
4.1
空軍士官学校の若き大佐ゴードンが突然発狂、自分の家族を殺し、訓練機を撃墜し基地を攻撃して戦闘機と共に逃亡。ゴードンに襲われながら九死に一生を得た上官ライアンは彼を追うが、彼は核ミサイルを盗んでおり…というストーリー。
「ブレーキ・ダウン」や「U-571」、「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ監督のサスペンス・アクション。VHS時は「ウォー・バーズ2」のタイトルでしたが、「ウォー・バーズ」とは製作者が一緒で「アイアン・イーグル」のフッテージ使ってる以外関連はないです。
タイトルからスカイ・アクションを想像しますが実際は発狂した空軍パイロットの凶行を描いたサイコ・スリラー路線で、戦闘シーンも少ないのでそれ目当てだとガッカリするかもしれません。しかし、パイロットが静かに壊れていく様がリアルに描かれ、緊張感を感じさせて退屈しませんでした。
誕生日パーティーで漂う家族なのに他人がいるかのようなぎこちなさと不安感、日常シーンもアホみたいなクイズ番組熱心に見る家族を無表情に眺める姿等にいつ爆発するかわからない狂気を感じさせ、緊張感を感じさせます。そして突発的に起こる凶行と、その後家族の死体を無表情に眺める姿に更なる狂気感じさせます。
ドッグファイトシーンは「アイアン・イーグル」のフッテージ流用してるようですが、それでも割と迫力感じました。基地を空爆してあっちこっちで大爆発が起きるシーンも見応えありました。これも流用シーンっぽいけど。
偶々通りがかったために道路に着陸したゴードンに人質にとられる夫婦の下りは「ブレーキ・ダウン」の前哨戦と言えるかも。赤ん坊を人質にとられ、ゴードンの買い出しに付き合わされる妻が小切手にメモ書いて助けを求めるシーンは地味にハラハラします。撃たれて倒れる二人を遠景で捉えたショットの寒々とした感じも好きですね。
また、主人公がパイロットを追う動機も正義のためではなく、訓練生を殺された憎しみの為復讐の為というのも一味違っていていいです。
単純なハッピーエンドで終わらず、陰鬱で重い余韻を残すラストも好みです。彼の凶行は誰にも知られる事なく終わるのか…
ゴードンが撃墜される直前に「やめろおおおー!!」と叫ぶのも印象的。特攻する覚悟決めててもいざ死が目前に迫るとやっぱり怖いのか、それとも使命果たせず死ぬことに恐怖を感じたのか。
主人公の吹き替えを担当した人気声優若本紀夫さんの演技が激渋で滅茶苦茶かっこよく、一見の価値ありです。ゴードンの吹き替え担当した「ONE PIECE」のサンジやジャック・スパロウでお馴染みの平田広明さんの無機質な印象受ける演技も良かった。
陰鬱なスカイ・アクションという事で好み別れそうですが、フッテージ流用した低予算のTV映画ながら、引き込ませてくれるジョナサン・モストウ監督は流石です。「ターミネーター3」以降あんま目立った活動がないのが残念ですね。