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リリーのすべてのp99のネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

3年前の3月。僕は初めて関西にやって来た。以前住んでいたアパートの荷物がまだ届いていなかったから、関西の初めての夜はホテルで過ごすことになった。

その日みた夢を今でも覚えている。あんなに綺麗で象徴的な景色を僕はみたことがなかったからだ。

紫とも青とも言えない空にかすかな黄色の光が差し込む。そして、その空を背景として「等間隔に並ぶ6本の木」が象徴的に配置されている。

目が覚めたとき、記憶に留めるために、部屋に設置されていたメモ帳へ先程夢でみた風景をラフに描きなぐった。

・・・

そして3年後。つまり現在。僕は関西から離れる。3年前に広げた荷物を再び段ボール箱に詰め、引っ越し業者に引き渡した。

その後、すこし時間ができたから、僕は『リリーのすべて』という映画を観にいった。

・・・

そして、僕は驚愕した。

「等間隔に並ぶ6本の木」

3年前に夢でみた風景がほとんどそのままスクリーンに現れたからである。画家である主人公が描く故郷の風景が僕の心象風景とリンクする。

・・・

この付合はいったい何を意味しているのだろうか?

映画の中では、「自分のなかにいたもう一人の(本当の?)自分」がその風景の源であったように思える。

じゃあ、僕の風景の源は…?僕のなかにも「彼女」が存在しているのだろうか…

・・・

いづれにしても、関西にいた期間の最初と最後に同じ風景に巡り会えたことで、綺麗に円環は閉じた。その大事なリングを指につけて、僕はまた新たな道を進んでいくのだろう。この物語の主人公が前に進み続けたように。

きっと「彼女」も見守ってくれている。
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