むにゃ子

リリーのすべてのむにゃ子のネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

いい映画って、
たとえストーリーがうろ覚えでも、
何年経った後でも心に残るセリフがある映画な気がする。

この映画で言えば、
終盤のリリーの
"You make me stronger"と
"I don't deserve such love"だった。

リリー、アイナー、ゲルタ、ハンス
それぞれが意図せずともお互いを苦しませ、
お互いを強くした。

どの人が欠けていても、
身体的な「リリー」は生まれなかった気がする。

時代が100年前近くとあって、環境が今と違いすぎて感情移入はあまりできなかった。
性同一性障害についての知識(理解ではない)は断然進んでいるし、
「統合失調症」と診断するやぶ医者はさすがにいないと思う。

ただ知識があっても、
心が受け入れるかどうかとはまた別で。

性同一性障害が背景となった映画だったけど、
「自分は、愛する人のどの部分を愛してるのか」
について問われた気がした。

ゲルタはもちろんアイナーを愛していたんだけど、
アイナーの中に潜む"沼"を愛せたんだろうか。

第一回の手術が終わった後、ベットの中で
「あなたはつい最近まで私の夫だったのよ」とリリーに言うシーンがあり、
まだリリーのアイナーだった部分に未練があるんだろうなって思った。

時間が解決することだったかもしれないけど、
それをする時間もなくリリーがいなくなってしまった。

同じテーマを扱った映画の中では
「彼は秘密の女友達」のほうが、
繊細に揺れ動く現代人の心を描き出して好きかな。

ただ、これが実話という説得力・リアリティは、
どの映画も超えることができないな。