吉

リリーのすべての吉のネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

自分にゲルダと同じことが起きたら、と頭のどこかで考えながらの鑑賞。正直あそこまで付き合いきれるかどうかと思った。
アイナーはリリーではないし、リリーはアイナーではない。アイナーがリリーでありたいと思うなら、そのリリーにはわたしは必要ないのでは。でも鑑賞中、リリーがゲルダを愛してると言う気持ちは本当だと思ったし(ゲルダが求めている愛情ではなかったにせよ、リリーにとっては)、術後も同じでいると思った?と訊ねたリリーも本心だろうと思う。自分自身でありたいという気持ちと、人間そのものを愛しているという感情を映像として見つめ、これは簡単には言葉で表せない内容だ……と感じながら映画館を出てきた。
あなたはあなたの人生を歩めと言ったリリーは希望に満ちていて、それはゲルダを奈落に突き落とすものだったはず。なのにそれでもゲルダがアイナーを求め続けたのは、画家としての才能という面もあるのかもしれない。だから画家よりも女でありたいと言ったリリーは、ゲルダのなかで終わってもおかしくなかった。それでも構い続けたのは、ゲルダの言うように長年の習慣だからという側面が少なからずあると思う。人間には、正直そういうところがある。悲しいかな。
ただとにかくハンスが好みだったのと、リリーの感情が表情から強く伝わってきたこと、またゲルダの「悲しみ」とひとくくりにできない心の動きには目を奪われた。
終盤、ゲルダがリリーに対して抱いていたのは、恋慕ではけしてなかった。しかし広い意味で愛情だったんだろう。
映画的なドラマチックさには欠ける作品だったが、響くものはたしかにあった。
わたしはリリーには付き合いきれませんが。
吉