Kientopp552

リリーのすべてのKientopp552のレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.0
 Lili Elbeが亡くなる同年の1931年に、自身の自叙伝が『Fra mand til kvinde男から女へ』という題名でデンマーク語で出版されている。その翌年には、ドイツ語訳が彼女が亡くなったドレースデンで、更に、33年にはドイツ語版から訳された英語版がロンドンで出版された。その20年後には、英語訳の完全版がニューヨークで、2004年にその重版が出されている。重版が出されたのは、同年にUSアメリカ人作家David Ebershoff(デイヴィッド・エバーショフ)が、『The Danish Girl』という題名で、Wegener夫妻の運命をかなりの脚色を加えて、発表したからであろう。この小説は、12カ国語に訳され、国際的なベストセラーになった。

 とりわけ、原作の小説ではゲアダがアメリカ人女性となっているのに対し、本作ではそれを史実に戻して、デンマーク人女性にしている。また、史実と異なって、映画では、Wegener夫妻の生活を1920年代に移している。とりわけ、ゲアダの芸術的方向が、アール・ヌヴォーやアール・デコとなっていることから、これでは、第一次世界大戦後のアヴァンギャルド芸術に較べれば、若干時代遅れの趣向である。本作では、なぜ、このように時代設定をわざわざ後ろに持って行ったのか、筆者には不思議である。
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