cinamon

リリーのすべてのcinamonのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.2
デンマークの風景画家アイナーと、同じく肖像画家の妻ゼルダの物語。妻の描く肖像画のモデルになったことをきっかけにアイナーが内なる存在だったリリーに変わっていく。
まだ、トランスジェンダーなどという概念もなかった時代。夫の本来の姿を苦悩しながら受け入れていくゲルダの勇気、寛容さ、愛情に圧倒されました。アイナーを異常とみなし、正常とされている状態(世の中の常識)に治療しようとする医師たちではなく、対象の美しさを引き出す画家としての感性を軸に、自らを信じる2人の姿勢に人としての尊厳を感じました。
デンマークの寂しげな風景、街並み、2人の住むアパートの壁の色、リリーやゲルダのドレス、病院の窓周り、どのシーンも絵画のように美しい。何より2人の繊細な表情に引き込まれます。今から約90年前の実在の人物がモデル。苦しく切ないのに希望を感じました。
cinamon

cinamon