みかん

リリーのすべてのみかんのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0
20世紀初頭、まだ"トランスジェンダー"という言葉はおろか概念さえ無かった時代。肖像画家の妻の女性モデルの代役をしたことを機に、自分の中の"女性"の存在に気付き、心と身体が一致しない苦悩の末、世界初の性適合手術を受けた夫の実話に基づくヒューマンドラマ。

女性モデルの代役をしてからの、ドレスをあてがってみたり、"女性らしい"ポーズや仕草をしたり、妻の悪ふざけで女装して「夫のアイナー」でなく「従姉妹のリリー」としてパーティーに参加していくうちに、自己の肉体とは異なる心の中の性別に気付くアイナー。

戸惑いや動揺、苦悩などの繊細な心の動きがひしひしと伝わってきて、とても考えさせられました。

エディ・レッドメインの演技力は、『博士と彼女のセオリー』でオスカー受賞したホーキング博士でスゴい!と感服だったのですが、今作もこんな難しい役を見事にやり遂げていて素晴らしかったです。

ちなみに、R15指定でグロい暴力シーンとかあったら怖いなと思ってたんですが、そんなものはなく、芸術的で俗っぽさのないエディのほぼすべてが見えるという点系ででしたw
グロいのあるかもと敬遠してる方、大丈夫ですw

風景画家の夫に肖像画家の妻。

夫の中にある"女性"を見つけ"女性"の"美"を感じ取って、女性の肖像画に表現して描けば描くほど画家として成功していく一方で、妻として"男性"の"夫"を失っていく様子はやりきれなくて切なかったです。

しかし、"真の自分"になりたい夫のために苦悩の末に受け入れ、支えたり励ましたりする深い愛情には脱帽でした。

男と女という前に、1人の人間と人間であって、夫婦であった2人の、あくまで人間同士の"魂で愛する"ということの美しさを感じました。

晴れ渡った青空の風景の中ではなく、薄曇りの光がにじむ風景の中で舞い上がっていくストール。

周りには理解されない、明るくはない灰色がかった世界でも、仄かな光の中で自由に風にのって舞い飛んでいく光景が、自分らしく生きる道を選んだリリーの生き様を表しているようで美しく印象的でした。


★風景画家のアイナーは肖像画家の妻ゲルダと結婚し、デンマークで充実した日々を送っていた。

ある日、妻に頼まれて女性モデルの代役をしたことをきっかけに、自分の中にいる"女性"に気づく。
困惑しながらも、だんだん女装することがやめられなくなっていき、心と身体が一致しない状態に苦悩する。

そんな夫の変化していく様子に驚く妻。

しかし、夫の本当の性は"女性"であることを受け入れ、2人は問題解決の道を模索する、、。
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