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ある天文学者の恋文のkomoのレビュー・感想・評価

ある天文学者の恋文(2016年製作の映画)
4.7
大学で教鞭を執る著名な天文学者のエド(ジェレミー・アイアンズ)と、その教え子のエイミー(オルガ・キュリレンコ)。歳が親子ほどかけ離れている2人だが、深く愛し合う関係だった。
空いた時間をエドとのメールに費すエイミー。いつものように彼の言葉を読んでいた時、なんとエドの訃報を聞かされる。エドは自身の死期を悟っており、生前にエイミーへの恋文を書き溜め、死してなお何らかの方法でそのメールを送っていたのだ。
激しく動揺するエイミーだが、エドが遺した恋文にレスポンスをしてゆく。そしてエドが暮らしていたエジンバラを訪れ、彼の真実を見つけようとするが…。


登場する言葉がこれ以上ないほどロマンチックで、胸にストンと落ちてきました。
主役2人の不倫関係だったり、回収されない伏線もあったりで、手放しで感動できない方も多いと思われる本作。
私も不倫を肯定するわけではないですが、私の場合は全体の構成とテーマがあまりにも好きすぎて、そういったわだかまりよりも感慨が上回り、ゆったりと頭を預けることができました。

エイミーと生前のエドの会話が、エドが亡くなってからもシステムのギミックとして生きて来る。そういった演出がたまらなく好きです。
エドが生きていた頃、彼の言葉がどれほどエイミーの心を満たしていたか。癒えぬ傷口を塞いでくれていたか。
序盤でそれが伝わってきたからこそ、死してなお生前と同じように言葉をかけてくるエドに対するエイミーの焦燥と寂寞が広がりを見せます。

今までと変わらず届くメール。しかしエドはもうこの世にいない。何もかもが変わってしまった世界。
夜空に輝く星は、実際にはとうの昔にその寿命を終えている。
それを自らで実証するかのようなエドの愛。

前述したように、好みが分かれる作品だとは思います。
しかし私のように、溢れる言葉たちにただただ耳を傾け、心を軽くできる方もきっといらっしゃると思います。
永遠性のある愛の物語が観たくなった時に、ぜひ。
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