しゅん

バビロンのしゅんのレビュー・感想・評価

バビロン(1980年製作の映画)
-
車のライトを割ると画面外から宇宙から届くかの如きダビーな発信音が鳴る。このカッコよさと愉快さ。とにかく、鳴ってる音が全部カッコいい。冴え渡るデニス・ボーヴェルの仕事。

地下の煙たいクラブで最高のダブを鳴らす奴らはジャマイカ移民の悪ガキで、カッコいいだけじゃなくて、エゴイスティックなところも理不尽なところも他人を馬鹿にするところも映される。そんなクソガキの中でも理知的に振る舞うドレッドの男ブルー(ブリンスリー・フォード)は、車修理の仕事をクビになり、家族のトラブルにつきまとわれ、差別を肌にうけ、警察から追われ不当逮捕にあい、恋人からも疎まれ、行き場なく戻った溜まり場ではなによりも大事なサウンドシステムが破壊されていた。ジェントルな男が凶行へと押し込まれる過程が生々しく、最後のDJing(ジャマイカカルチャーではマイクパフォーマンスをDJと呼ぶ)と警察の様子を繰り返し映すモンタージュには熱くならざるをえない。

仲間同士のケンカで、白人であるだけで殴られるロニー(カール・ハウマン)が、残されたブルーと目を合わせる切り返しのシーン、ジンときちゃう。


反乱と暴動が普通の生活を脅かされた末に発生するものであることを、ここまで強靭な説得力で示す作品もなかなかない。
しゅん

しゅん