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揺りかごの河のレビュー・感想・評価

揺りかご(1931年製作の映画)
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https://www.cinematheque.fr/henri/film/84561-les-berceaux-jean-epstein-1932/

Sully Prudhommeという詩人の詩にメロディをつけて歌われた曲に映像を当てたもの。ジェルメーヌ・デュラックが前年に『Celles qui s'en font』で既存曲に映像を当てていたのを考えると、これがトーキー移行時の実験的な手法の一つだったのかもしれない。

詩の内容は、生まれたばかりの子供と妻を残して海へと旅立っていく男が、その船から妻の揺らす子供のゆりかごへと思いを思いを馳せるというもの。

映像はそれに応じたものとなっていて、妻と子供よりも旅を優先したことを後悔する話のように感じられるが、ラスト近くに十字架のショットが挿入されることによって、一気にその旅に死の印象がまとわりつくようになる。そして、最後に映る船はもはや旅に向かうものというよりも死に向かっていく幽霊船のように見える。

それによって、船出についての詩から、妻と子供を残して死にゆく男についての詩としてより普遍的な意味を持つようになる。おそらくこの映像による詩の意味の普遍化が狙いだったんじゃないかと感じた。
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