MasaichiYaguchi

ゲキ×シネ「蒼の乱」のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ゲキ×シネ「蒼の乱」(2015年製作の映画)
4.1
「劇団☆新感線」の舞台はスタッフとキャストの公演に対する熱い思いが押し寄せ、観ていて舞台と我々の境界が無くなり、いつの間にか作品世界に引き込まれてしまう。
その舞台をスクリーンで再現する《ゲキ×シネ》は公演同様の二部構成で、幕間にあたるインターミッションを設けたりするのだが、本作では熱気が冷めないように168分の上映時間で一気に観せる。
この作品は、平安時代中期に同時期に起きた平将門の乱と藤原純友の乱、総称して承平天慶の乱を下敷きにして、「劇団☆新感線」らしいキレの良いチャンバラを中心とした血湧き肉躍る活劇や男女のロマン、ハイテンションな展開の中で一息つかせるギャグを織り交ぜ、ケレンミ溢れるスペクタクルな劇空間を繰り広げる。
本公演では看板役者の一人、古田新太さんが出ていないので寂しいが、もう一人の看板役者と言って良い天海祐希さんが主役を張っていて、その男前な魅力を遺憾なく発揮している。
この天海さんの相手役で、平将門をモデルにした将門小次郎を松山ケンイチさんが、草の海広がる故郷、そこに生きる人々や馬を愛する純朴な坂東武者の若者として熱演している。
その脇を固める栗根まことさん、高田聖子さん、橋本じゅんさんらのレギュラー陣は安定感抜群で、更に演劇界の大御所である平幹二朗さんが要所要所で作品を締めていく。
大衆演劇界のスター・早乙女太一さんが実弟・友貴さんと共に重要な役柄で出ていて、キレのある殺陣と颯爽とした立振舞いで作品に若さと勢いを与えている。
毎公演、斬新な舞台と演出、水を得たような役者たちの演技、それらが合わさって生み出す熱で我々を酔わせ、圧倒させてくれる「劇団☆新感線」の舞台。
新型コロナウイルス感染拡大で劇団40周年興行・夏秋公演いのうえ歌舞伎「神州無頼街」が誠に残念ながら全公演中止になってしまったが、この事態が収束したら更にパワーアップした舞台を我々ファンの前で繰り広げてくれることを祈念しつつ復活を待ちたいと思います。