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アルプス 天空の交響曲のくりふのレビュー・感想・評価

アルプス 天空の交響曲(2013年製作の映画)
3.0
【レリゴーアルペン】

キネ旬シアターにて。これは予告編の映像がキモチよく、劇場のスクリーンがよかろうと思ったので、みました。

アルプス山脈とその周辺地域、自然とそこで生きる人の営みを、シネフレックスカメラで空撮した映像集。空撮なので少し他人事に窃視的に、ありのままの姿を眺める。

チクリと来る傷跡も映りますが、基本気楽なツアーでした。劇場設備の問題かもだけど、画面解像度は予想ほど鮮明ではなく。

でも、このカメラのブレ補正は凄いですね。被写体にズームするほど、地上から撮っているようにも見えてくる。山頂部のダイナミズムが素晴らしく、時に足もすくみましたが(笑)、どこかで見たような映像ばかり、というのも正直な感想。

ちょっと降りて、スキー場の巨大マットには驚きましたが。温暖化で氷河融解が進むため、オフシーズンにはプラスチック製のでかマットで地表を覆っているんですね。これが包帯みたい。そのうちスキーはできなくなるのでしょうね。

しかし山々の狭苦しい頂上に、一宗派のシンボルに過ぎない十字架が、やたらデカデカと立てられているのにはヒキました。地域的にクリスチャンが多く、その歴史が厚いこともわかりますが、かえって傲慢に映る。

当然反対派もいて、過激な連中が壊してしまう事件が何度も起きているんですね。対話もなくそれやっちゃダメですが、このままでよいかも検討すべきと思った。誰もが必要とするものではないのだから。


面白かったのは、最上部から最低部までを、ひとつのつながりある映像として見られるところ。空撮の利点ですね。ライン川の大きな変遷などなるほどなあ、と驚きます。

山の土砂崩れによる、巨大落石のながーい軌跡も恐ろしかった。進撃の巨人がボウリングやったみたい。

しかし一番心に残ったのは、犬ぞりレースの訓練風景。山と薄い霧に囲まれた、どこまでも真直ぐのびる一本道を、朝日に向かって走るハスキー犬たちの画は絶妙で、この世ならざる趣さえ、ありました。

終わってみて一つの像が結ばれるようなこともなく、映画としては大仰な入れ物でしたが、眼はずいぶん、癒してもらえました。

<2015.9.2記>
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