けーはち

軍中楽園のけーはちのレビュー・感想・評価

軍中楽園(2014年製作の映画)
3.7
831部隊と呼ばれた貧困者や罪人の女性を兵士の慰安に用いる娼館「軍用特約茶室」俗称「軍中楽園」を描く台湾映画。エリート部隊で挫折し831部隊に転属、娼婦の監督係となる純朴な青年兵士が主人公。娼婦と彼の奇妙な友情関係、そして彼の同僚・上官らが娼婦にガチ恋して巻き起こる事件など様々な悲劇を描く戦争ドラマ。女性の人権を軽視していた時代、しかも国共内戦という極限状況の影の部分で、当然ながら全体に悲惨で辛い空気が漂う作品ではあるのだが、頭上を砲弾の雨霰が飛び交う中で女同士が意地を張り合ったり、男女で秘事を交わすその姿は、不思議とシュールで可笑しみすらある。台湾の夏のようにじめっと湿気の漂う人の情、人間の弱さ、脆さと裏腹のしぶとさ、生命力が心強くもあり、死と生が淡く美しい音楽と映像とともに悲劇的ながらも悲観的になり過ぎない、良い距離感で描かれている。あり得たかも知れない幸せな未来、希望が溢れるイメージに胸を打たれる。