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軍中楽園のSosekiのレビュー・感想・評価

軍中楽園(2014年製作の映画)
3.4
1969年、中華民国(台湾)軍と中国人民解放軍で戦闘が行われていたころ、台湾の金門島(大陸から2kmほど)に実在した軍が管理する娼館、俗称「軍中楽園」を舞台にした作品。

このような軍管理の娼館制度は1992年に廃止されて、以後、その存在は語られてこなかった。が、かつては確かに存在して、そこに生きた人々がいて、ドラマがあったことを、政治を抜きにして淡々と描く。

客観的には相当厳しい場所だが、主人公の素朴な人柄と温暖な気候(ショーパンの軍人!)もあって、どこか長閑な空気が流れる。月下美人の開花は中華圏の人々にとって特別なのだな。あと、ラストの「実現しなかった夢」のような3枚の写真がセンチメンタルでした。

以下、作品を理解するのに役立ちそうな台湾事情byWiki

清統治時代(-1895年)に清から漢民族が台湾に侵入、原住民と混血が進み、今の台湾人の基礎となる。

日本統治時代(- 1945年)を経て、1945年、蒋介石率いる中華民国国民政府軍が台湾に上陸。以後、台湾の政治権力を独占(国民党)。このときに大陸からやってきた一派が「外省人」で、これ以前から台湾に居住していた者が「本省人」(民進党)。なお、台湾の建国記念日は1911年10月10日、清打倒と中華民国樹立を目指し兵士たちが蜂起した辛亥革命の日。

一方、中国大陸に目を転じると、1945年、第二次世界大戦終結後、中華民国と中国共産党で国共内戦勃発。1949年、中国共産党により中華人民共和国(現在の中国)が成立し、中華民国政府は台北(台湾)に拠点を移す。

その後、人民解放軍は、台湾攻略を目標に金門島攻撃を行う。一方、米国は共産勢力に対抗するため、台湾を支援(この時期に多くの台湾人が米国に渡る→例えば今注目のNVIDIAのCEOもこの時期に移民した台湾系アメリカ人)。「軍中楽園」はこの時代。そして、1979年に米中国交樹立以降は、台湾・中国間で戦闘行為は行われていないとされる。
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