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愛を複製する女のすずのレビュー・感想・評価

愛を複製する女(2010年製作の映画)
4.0
見渡す限り広がる海辺の静かな町。この最果てのような海で、幼いレベッカ(エヴァ•グリーン)とトミー(マット•スミス)は出会い、恋をした。離れ離れになってもお互いを想い続けた2人は、成熟した時を経て再会を果たす。止まっていた時間が再び動き出したはずだったが、交通事故に遭いレベッカの目の前でトミーは帰らぬ人となった。茫然と静かに亡骸を見つめるレベッカ。後日、彼女が手にしていたものは遺伝子複製に関する同意書であった…。

人類の禁忌を冒した先にある一つの未来絵図。禁断の扉を開けた人類が生きる新世界で、失った愛を自らの胎内に複製した女。

自分の息子でありながら、死んだ恋人そのままの容姿。理性と本能の狭間で揺れる心理が、居心地の悪い官能へ誘う。

穏やかな静けさのなかに張り詰める刺激。狂気の愛と、胸に迫る切なさと、どうにもアブノーマルで エロティックなスリル。波打つ海の音が胸に迫り、果てしない静寂をかき消すかのように脈打つ心臓の高鳴り。とても危険な鼓動を覚える 新感覚のSF〝スリラー〟。

タブーを冒した共犯者のような気持ちで、仮面のように表情の乏しいその美しい顔から 涙だけ流しているエヴァ•グリーンの表情を複雑な気持ちで見つめていた。そして、クローン技術における倫理観念に対して、新たな悲劇性を提示した作品である。
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