ろく

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターのろくのレビュー・感想・評価

4.0
まずは「写真」の力に圧倒される。動いている映画よりもサルガドの撮った動いてない「写真」が僕を惹きつけるんだ。

その点ではこの映画はひょっとして失敗かもと思った。というのも、映像が「写真」に負けている、そう感じたからだ。いや、そもそもこの写真たち以上に惹きつける映像があるのか、それくらいこの写真たちは求心力を持っているんだ。

ただ、この映画ではその写真の力だけでなくサルガドという一人の写真家を丁寧に追っているのは好感が持てる。ここにあるのはヴェンダースの見事な仕事だ。ヴェンダースは決して焦らない(それは「ベルリン・天使の詩」や「都会のアリス」ですでにわかっていることだけど)。ある意味退屈ではあるのだけどそれは観る者たちに「考えさせる時間」を与えるということなんだ。

前半の人間の軽々しい死(ルワンダ、イラク、チェコ、コンゴ)にも圧倒されるが(人の命はこんなにも軽くあるのか)、後半の自然写真はまさに圧巻。そこがサルガドが行き着いた楽園かのようだ。北極、アマゾン。決して生活が楽ではないはずなのに僕はそこに「楽園」を見てしまう。それはサルガドもそうであったのであろう。そこには溢れんばかりの幸福がある。
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