アリ

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターのアリのレビュー・感想・評価

4.2
ブラジルの社会派写真家、セバスチャン サルガドの半生を追いながら、彼の見てきた世界、撮ってきた世界に驚くばかりの映画でした。
マクロな視点からの問題意識をミクロな現場で捉える、その写真のたしかさに、ニュースや本でしか知らない出来事が塗り替えられていくように感じられます。

ルワンダ内戦を撮ることで自身も深く傷ついてしまったとき、故郷の荒れた農園を家族とともに森林として再生させるという試みを通じ再びカメラを手にする、なんて何だか「映画的」なエピソードも。
人類の有り様に絶望して自然回帰?なんて書いてしまうと陳腐なようですが、彼の写真をみると、どんな絶望的な人間の営みもやはりこの地球の一部としてあり、それを失われるものとしてだけでなく、生まれ来る、再生するものとして捉える視点を感じることが出来ます。

原題の「地の塩」は新訳聖書の言葉で、非クリスチャンには直感的ではないものの、深遠なニュアンスで素敵なタイトルだと思います。
それにしても美しい、苦しい、絶望と希望に満ちた天才写真家の眼差しを映画で体感できる(気分になれる)なんて、映画ってやっぱりすごいメディアじゃないですか。
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