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リズム21の南のレビュー・感想・評価

リズム21(1921年製作の映画)
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仙厓義梵の墨絵のような、オイラーの公式のような、コルビュジエの建築のような、ジャコメッティの彫刻のような、スティーヴ・ライヒの音楽のような、フリーザの最終形態のような、美学として完成されたシンプルさ。

画家として活動を始めたハンス・リヒターは、次第に実験的な前衛映画を手掛けるようになる。

『リズム21』はモノクロの画面上で、四角形が変化する様子をひたすら見せる4分弱の映像だ。

様々な個数、配置、大きさの四角形が、
様々なスピードで、
様々な方向に、
拡大と縮小、伸び縮み、移動を繰り返す。

私たちが普段目にしているどんな映画も、煎じ詰めれば、水平な面の上で図形が上記の変化を遂げる光景を眺める娯楽と言える。

『リズム21』は映画が持つ具体的な要素を徹底的に削ぎ落とし、本質的な部分だけを残した「映画の骨格」のような視覚体験を提供する。
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