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マーメイド NYMPHのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

マーメイド NYMPH(2014年製作の映画)
3.0
学生時代の友人を訪ね、モンテネグロでバカンスを楽しむ一向。美しいアドリア海に浮かぶマムラ島には、先の対戦において刑務所として使用された廃墟が今なお聳え立ち、その奥深くでは更に恐ろしい海の伝説が待ち受けていた。


◆ダークな人魚伝説

タイトルがNymphで、作中ではスキュラと語られ、舞台はアドリア海。ギリシャ神話で登場する海の精が持つダークサイドを全面に押し出した作品でした。男衆を骨抜きにしてしまう魔性の歌声。井戸の底には人骨が散らばり、美しい容貌がヌルッと醜い姿へと様変わりする。作品の中に神話的なエッセンスは殆どなく、マーメイドの怪物的な側面にフィーチャーしていました。神話厨的には少し寂しい節もありましたが、そういうテイストの作品ではないのは承知しているので、贅沢は言いません。

今作では、ややパリピでちょいウェーイな若者達が呑んで、踊って、焼け木杭に火が付いて、地元のおじちゃんの忠告を無視して人魚の住む島に突っ込んで行ってしまい、まんまと彼女の夕飯になってしまうお話。

怪しいおじさん、凄惨な出来事があった離島の廃墟、その奥に潜む怪物。低予算のB級作品ではありますが、雰囲気作りは上手かったと思います。エログロ描写も程よく、感情移入できるキャラもいなかったので、サクサクっと観れてしまいました。90分少々と比較的尺が短いのも良かった。


◆血生臭い旧ユーゴスラビアの歴史

セルビアの映画で、舞台はモンテネグロ。東欧の国の歴史についてそこまで明るくないのですが、世界史を専攻していて良かった。旧ユーゴスラビア繋がりで何かしらの関連がありそうだなって調べてみると、映画の舞台となっているマムラ島が実在していてびっくりした!GoogleMapを開いてみると、史跡として《Fortín de Lastavica》という名前の円形の砦があって、中心には例の井戸が。俄然興味がわいてきました!

劇中では、マムラ島の要塞は第二次大戦時にファシストの強制収容所として使用されており、非人道的な拷問や処刑が繰り返されていた血塗られた場所だと語られていました。実際にはどうだったのかわかりかねますが、かつてモンテネグロの地を蹂躙したファシストが人間の事をむっしゃむしゃ食べちゃう人魚(Zorana Kostić Obradović)に置き換えた反ファシズム映画であることは間違いなさそう。

人間なのに、残酷な人魚の手足となってせっせとご飯を集めてくるグロゴア要因のおじちゃん(Miodrag Krstović)は、ファシズム占領下のユーゴスラビアで組織された反共主義勢力《チェトニク》を皮肉ったものなのかな。枢軸国(イタリア、ドイツ)支配からの解放をかかげながら、傀儡政権(セルビア救国政府)と癒着して人民解放戦線である《パルチザン》と敵対したり、周辺国への残虐行為を行なったり。お前こっちの味方じゃないのかよっていう。

俺たちの戦いはこれからだ!的な週刊少年ジャンプ風エンディングも、2000年代まで尾を引いた《スレブレニツァの虐殺》などの終わらない血塗られた歴史を象徴している様でした。当時の非人道的行為については【アイダよ、何処へ?】という作品がテーマにしているようなので、時間があればそちらもチェックしてみたいです。


*雑記*
hideさんのレビューを読んで、ダーク・マーメイド(×ギレルモ風、◯半魚人風)が気になって鑑賞しました!セルビア映画デビュー作!(東欧映画自体お初かも!)
血みどろマーメイドは噛めば噛むほど味が出るスルメ系でした!(やだなんか僕がサイコみたいな発言になってる!)