喜連川風連

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破の喜連川風連のレビュー・感想・評価

4.0
うおおお!これは凄い!!!

アニメの総集編だと油断していた序から一転。自身の願いのために戦う物語へ。

人間誰しもが心にATフィールドを抱えている。
他人と自分を分けるATフィールドがあることで、自我を保っている。
しかし、時にそれがぶつかり合うことで、傷つけたり、傷つけられたりする。

時には、逃げて弱い自分を守ったり、叱られないように優しい自分を取り繕ったり、してしまう。

今回印象的に用いられていた、シンジのカセットテープ式ウォークマン。
外でイヤホンをしている限り、他の嫌なことから逃げられる。
自分自身、よく外界と遮断するために、イヤホンを用いていたことを思い出す。

だが、逃げる必要のなくなった、最終盤でカセットテープは捨てられる。

だが、それを綾波レイは拾い、シンジが二度と辛いめに合わないように、初めて他人のために戦おうとする。

出てくる大人たちが、己のために戦おうとするなか、綾波レイと掟シンジはそれぞれを想い合って、戦う。

あまりに美しいラストシーンだ。
不覚にも泣いてしまった。。

親から認められてこなかった子どもたち3人による承認欲求の物語。

90年代後半を襲った地下鉄サリン、不況、売春、大震災。
経済成長という共通の目標を失った日本人に問いかける「私とは何か?」という問い。

その昔は、鬱々とした雰囲気と主人公のナイーブさが苦手で、あまり好きではなかったのが正直なところだが、大後悔。

傑作中の傑作だ。

セカイ系だなんだ言われているが、他のセカイ系と段違い。

新海誠氏のセカイ系は、悩みやトラウマもなく、自分の欲望のために、彼女だけが救われる世界を選択するが、庵野秀明氏のセカイ系は、悩みに悩み、トラウマに苦しめられ、転がりながら掴む等身大の愛と世界の物語。

傷つくことは確かに痛い。
だが、痛みを知っている人間は他人に優しくできる。

痛みを知らず、逃げて逃げて家に引きこもり、Twitterに罵詈雑言を書き込む状況を見ているようで、ゾッとした。

YouTubeのコメント欄に、息子の初恋を応援するために、頑張るユイエヴァとあってほっこりした。
喜連川風連

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