半兵衛

センチュリアンの半兵衛のレビュー・感想・評価

センチュリアン(1972年製作の映画)
4.2
仕事で理不尽な目にあった経験のある人には、この映画のミニマムな事件に追われ身も心もすり減らして疲弊する主人公の警官たちが大いに共感できるはず。そしてどんなに頑張っても一部の人たちからは敵のように扱われ、理解ない人たちから馬鹿にされてもそれでも職務に励む主人公が誰から期待されていなくても微かに世間に役に立っていることを信じて仕事をする自分に重なってきて切なさを増す。終盤で犯人を取り逃がし悔しがる警官が車に八つ当たりする場面は「ああ、俺も仕事のときこんな気持ちになったな…」と思ってしまった。

フライシャー監督は簡潔な描写でドラマをさばくのが上手く、この作品でも主人公夫婦の亀裂を警官の仕事と並行してテンポよく描き、肝心の愁嘆場もあっさりと処理しつつ二人の距離と会話で断絶した状況であることを如実に示すのがさすが。あとジョージ・C・スコットの最期も彼のドラマをくどくどと描かず、ちょっとした彼の言動や態度と遠い目をしているスコット、そして最後の会話だけで彼の心の中にあるものを画面から醸し出す演出も見事。

リチャード・フライシャー監督は車の演出が上手いけれど、本作でもあるときには刺激的なアクション(クレイジーな暴走シーンのインパクト!)、あるときには密室内のドラマとして、あるときには場面転換として使われたりと様々なアイテムとして機能している。

警官同士のジョークや娼婦との会話など笑えるシーンも結構多く、中でもハッテン場で風紀を乱すゲイを捕まえる際に突然のことで事態を理解できないゲイが「お巡りさん助けて!」と叫ぶシーンに爆笑。

終盤の死亡フラグがあまりにも解りやすすぎて苦笑いしてしまう。
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