ハミングバード

ワルシャワ、二つの顔を持つ男のハミングバードのレビュー・感想・評価

3.8
ポーランドという国は度重なる他国の侵攻や支配下という憂き目に会い、国家が無いという時代すらある。特に第二次世界大戦時にはナチスとソ連に侵攻され、あの有名なアウシュビッツはポーランドに存在した。また我々映画ファンにはアンジェワイダ監督の『抵抗三部作』や『カティンの森』という作品に大戦時代の戦争と政治による多くの犠牲者の存在を知ることになり、この作品は、大戦後の所謂冷戦時代にソ連の支配下にあるというまたしても冷遇時代に起こった史実が基本となっている。支配下という屈辱的な国家の運命を憂慮したポーランド軍将校が、アメリカCIAへ膨大な量のソ連の機密情報を流し続けた様子が淡々と描かれる。何故この将校が約10年にも渡りその様な行為に及んだのか、そしてその彼の勇気ある行動が国家の将来へ何を残したのかを『カティンの森』の製作にも参加したこの監督は訴えたかったのだろうと思う。ラストシーンのテロップで明かされる、一緒に亡命した家族は次々とアメリカに居住しながらも原因不明の不慮の死を遂げているという事実もまた、この史実の奥深さを感じる。ワイダ作品の好きな方へはお薦めの作品です。
ハミングバード

ハミングバード