Himako

ヒメアノ〜ルのHimakoのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
2.5
古谷実がヒミズ以降に表現するようになった、"いわゆる底辺"に位置する人間の心理描写や、社会の理不尽さを描いた作品の一つ「ヒメアノ~ル」の実写化作品。

映画のワンシーンで、安藤役のムロツヨシが言うセリフに、「誰だって人生に満足していないんだよ。だからこそ不満を解消するために努力するんだよ。」というセリフがある。
それに対しての森田(奇しくも同じ名字の森田剛が演じている)のアンサーが、この作品の全てを物語っている。

漫画六巻分のストーリーを映画の時間内に集約しきれなかったのか、"森田が抱える本当の苦悩と、人生に対する諦め"が表現しきれていないために、ただの残虐映画になってしまっているのが非常に残念。

「残虐」や「暴力」という意味ではとても表現力が高くて、ありがちなバイオレンスな快楽殺人者のような表現ではなくて、派手さもなく、淡々としっかりと殺す描写が「森田」というキャラクターを如実に表現している。特に、残虐シーンとセックスシーンが交互に入れ替わりながら描く様が一番の見どころ。

努力ではどうしようもない、生まれながらに決められたスペックの差、環境の差によって生まれるジレンマ。
そもそも努力できるという"力"も「才能」だし、「能力」なんだよ。
本当の底辺とは、本当の生きる地獄とは、底辺に甘んじるしかなく、夢も希望も持てずに、ただ諦めながら生きているんだよっていう、社会の抱える闇をしっかりと表現している。


ただひとつ、どうしても残念なのが、ラストシーンを原作と変えたところ。
ラストを変更してしまったことで、森田をちょっとだけ救おうとしてしまったことが非常に残念。

現実はもっと厳しく、そして冷たいものでしょう。

これが「世の中へ希望や夢をキチンと抱いて、エンターテイメント作品なんか作る心の余裕がある人のアンサーなんだな」と感じる作品でした。
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