イペー

ヒメアノ〜ルのイペーのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
3.9
主人公・岡田と殺人者・森田のキャラクターは表裏一体。

両者ともハッキリとした感情の裏付けを持たず、状況に流されているという意味で、共通する部分も多かったり。

並行して描かれる日常。
ブライトサイド & ダークサイド。
際立つ明暗のコントラスト。

キッカケに差はあれど、岡田も森田も主体の無い存在として描かれていて、一方はラッキースケベで、一方は衝動的なバイオレンスで"己"を獲得していくという。

高校時代に決定的な"発端"を置くことで、「森田が生来のサイコ野郎ではない」
ことを匂わせてます。

映像化にあたっての配慮も見え隠れしますが、救いの見える結末も悪くないですね。
原作の持つ余韻の深さも素晴らしいので、未読の方は是非。

平凡に暮らすことの困難、フツーであることの欺瞞を、イヤな角度から告発する。
グラグラと足元の揺らぐような居心地の悪さこそ、古谷実作品の持ち味だと思い込んでおります。

短い射程でしか未来を捉えられない若者たちが味わう、天国と地獄。
映像化にあたって、原作の持つジリジリとした空気を見事にパッケージ。

濱田岳とムロツヨシのキャラキャラしい(?)演技を向こう側に置いて、森田剛の怪演には驚嘆!
「ジャニーズだから…」なんて、色眼鏡で見てはイカンですな。

良い意味で"マンガ的"な演出や芝居を見るにつけ、もしかしたらマンガ原作の映画は洋画にはない、日本ならではの映像表現にたどり着きつつあるのかも…なんて思っちゃいました。

それにしても!
「麦茶」というアイテムの持つポテンシャルの高さよ。

無情な社会に呑み込まれ、流れ出る血液と共に拡散してしまった自我が、時空を超えて甘やかな過去に回帰するヨスガになるんですよ、「麦茶」が!

本作が麦茶映画史上に燦然と輝く作品であるのは間違いありません。

…ドメスティックで、ノスタルジックで、ミネラル補給に効果的なマジカルドリンク、それが麦茶。
かつて我が家も常備してました。
パック入れるやつ。
いつまでも入れっぱなしにしとくもんだから、ほろ苦くてねぇ…。
イペー

イペー