まこぞう

グランド・ジョーのまこぞうのレビュー・感想・評価

グランド・ジョー(2013年製作の映画)
3.8
冒頭、少年がニコラス・ケイジに「木を切っているの?」とたずねた答えが「木を殺しているんだ。(略)雇い主に言わせりゃ弱い木は役に立たないから殺すのさ」(←うる覚え)で、いきなり不穏な空気がびんびん。そしてそのテンションがラストまで保たれていた傑作でした。

ほぼルンペンな少年の父親役が演技に見えないほどリアルで「上手過ぎて賞が獲れないタイプの役者だな」とか思いながら観ていたら、役者じゃなくて本物のホームレスとのこと。こういう逸話はありがちで、邪道だとさえ思うけど、これは本当にすごかった。撮影後すぐ亡くなったらしい。R.I.P.

全体的に嫌味のないニューシネマっぽさを感じたし、ラストの銃撃戦はフィルムノアールの影響さえもあるような、と思うのは私がシネフィル気取りだからかな。それは的はずれかもだけど、今でもこんな撮り方の映画があるんだとちょっと感動さえした。アル中DV親父でぶっ壊れた家族、南部の片田舎の資本主義社会の犠牲者とも言える最底辺の人たち、など今風な被写体ながら語り口がオールドスクール。

終始もやもやしていて、少なくとも二度出てくる父親の”Are you my friend?”という台詞の真意など一度観ただけでは分からないような難解(?)なところも沢山あった。そこがまた最高。
素晴らしい映画が一度観ただけで全部分かってたまるものか。何度も観させて何度も「なるほど!」と言わせてこそ名作。本作が多分それ。
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