ルイまる子

あるメイドの密かな欲望のルイまる子のレビュー・感想・評価

あるメイドの密かな欲望(2015年製作の映画)
4.1
よく出来た映画とは言い難いが、私の心は強烈に持っていかれた。近代ヨーロッパの下層階級女性の陵辱され方が、多分日本の江戸時代とかの比ではない絶望的感覚が残る作品だ。レア・セデュ演じるセレスティーナの不機嫌な顔と死んだ目つきが物語の全て(というかこの女優さん、ルイヴィトンのポスターでも常にこの死んだ目をしているので彼女の芸風かも…)。時たま意図的にアップになるときの頬や肌が真っ白でなめらかで美しかった。フランス映画というのは常に言える事だが、全体から発する雰囲気や美術は極上だが、ストーリーが時々飛び理路整然としてないから解らなくなる。しかし改めてこの映画は何が言いたかったかというと、19世紀下層階級に生まれた女性に幸せなんかないってこと。辛酸を舐める日々、絶望的な人生を送る小間使いのリアル。主人次第で娼婦も兼ねた仕事をさせられる。奉公人というのはまず処女をご主人か同じ家の召使いの男に奪われ、意地悪な女主人にこき使われ、食事なんか野菜の端切れが浮いた薄いスープと硬いパンだけ。性についてはブサイクに生まれたほうがまだ男たちから陵辱されにくく、きれいだったら朝から晩までセクハラされ放題。気の強いセレスティーナも最後の方では従順な気の弱い女性へと変貌し、初老に近い?!革命家の男の片棒を担ぐ。しかしこの男に心底惚れてる感じで、あんなおじいちゃん?と違和感はあったが確かに若者と恋をしてもお金は貯まってない、経験もなく守ってもらえないし、同じ下層階級ならばおじいちゃんの方が頼りになるかも。最後に港町のバーの女主人になったイメージを思い浮かべろと言われるの、なんか腑に落ちた。男達に媚を売り酒を飲ませる仕事は良くはなくとも、今よりは笑っていられるし、まだ自由がある分一縷の望みかもしれない。そのおじいちゃんとはある種偽装結婚で友情だけで支え合い結婚するのだ、と説得されるのも腑に落ちた。洋服と小物は全て美しかった。矢張りフランス映画の美術は他国とはレベルが違う。メイドの制服もとってもかわいい。最初のシーンはメイドなのに貴族と見間違うほど豪華なドレスを着ていたが、元パリ暮らしを強調するためか?しかし、あそこまでの貧困者があのドレスはないわ…
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