グラッデン

サウスポーのグラッデンのレビュー・感想・評価

サウスポー(2015年製作の映画)
4.3

ボクシング世界ライトヘビー級王者として君臨するビリー・ホープの喪失と再起の物語。

私は、ボクシングを題材にした映画と聞くだけでハードルが少し高くなります。というのも、ボクシングと映画の2つは、非常に相性が良いものと考えているからです。

プロレスにも通ずる部分がありますが、四角形のリングの中にいるファイターは、自らの身体表現=ファイトとそれを支える背中で多くを語ります。何よりも、その戦う姿に生き様・人間性が滲み出てきます。映像表現、特に映画はそうした「戦いのワンダーランド」の醍醐味を伝えるのに適していると考えております。

そして、本作でも『ロッキー』や『レイジング・ブル』、あるいは『クリード』といったボクシング映画の人気作がそうであるように、自身の生き様と切り開くべき未来が、ボクシングで表現するというシンクロが発生しております。

ただし、本作が特徴的だと思ったのは、本作が、ビリー・ホープというボクサーの「第2章」を描いている点だと思います。施設で育ったビリーが、ボクシングをはじめて王座を獲得するまでの物語=本作に至るまでのキャリアを「第1章」すれば、本編で語られるのは栄光の後に訪れた多くの挫折とそれからの復活を繰り返す悪戦苦闘の物語です。

ボクサーと家庭の双方において、大きな喪失から崩れ落ちるような転落を経て、再起にかけるビリーの姿には自然と胸が熱くなりますし、自然と応援したいマインドに持ち込まれてしまう。

かなりストレート勝負ですが、ビリーの前に進む姿勢にシンクロしてしまいます。試合の勝ち負けを抜きにして、この時点で鑑賞者としては完敗です(汗)

また、少し言い訳がましいですが、物語としてはベタさはありながらも、上手く乗せられたのはディティールの影響が大きかったと思います。
特に、監督が元ボクサーということで、ボクシングに関する描写については「細かさ」と「わかりやすさ」を上手く使い分けていたのが印象的でした。
例えば、試合前のアスレティックコミッションの立会い等のバックステージの描写には多く場面を割いてますが、技術的なアプローチについては普段ボクシングを見てない人でも理解できるようなロジックで説明してる。マニアックになりすぎず、かと言ってチープにもならない絶妙のバランスだったと思います。

以上のように、王道とも言えるストーリー展開ながらも、時間軸の切り取り方や物語構成で盛り立てつつ、ボクシング描写を中心としたディティールの徹底しており、非常に良い仕上がりを見せており、隙の無いボクサーといった印象です。
なお、主演するジェイク・ギレンホール(前作『ナイトクローラー』での風貌を微塵も感じさせない)脅威の肉体改造も大変素晴らしい仕上がりぶりです。

野郎はもちろん、ボクシング映画を見たことの無い女性にもオススメできる、かなりオールラウンドな作品になっております。

最後に、本作は、本アプリで試写会で公開に先立ち鑑賞する機会をいただきまきした。この場を借りて御礼の言葉を述べたいと思います。ありがとうございました。